3. 相続財産調査
被相続人名義の土地や建物といった不動産、現金、銀行や郵便局等の預貯金、株式、社債などの有価証券、宝石貴金属、船舶・車両など金銭に見積もることが出来る経済的価値があるものは全て相続の対象となる財産です。
借金などのマイナス財産も相続の対象になる財産です。受取人が指定されている死亡保険金や死亡退職金は受取人の固有財産で分割協議の対象財産ではありませんが、みなし相続財産として相続税の対象となります。また、過去3年間に被相続人から受けた贈与財産も相続税の対象になります。
一方、墓地、墓石、葬儀費用、香典、遺族年金等は相続財産に含まれません。
これらの財産は、それぞれの評価方法により財産評価して財産目録を作成します。
4.相続放棄・限定承認
借金などのマイナス財産が、土地や預貯金などのプラス財産より明らかに上回っているような場合に、相続人がその相続権を放棄することによって債務の承継を免れることが出来ます。
相続放棄は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
また、相続人全員の同意がある場合には、取得する財産の範囲において債務を承継する限定承認を選択することも出来ます。この場合も、3ヶ月以内に家庭裁判所に財産目録を提出して申述することになります。
5.準確定申告
相続人が死亡した年の所得について、確定申告する必要がある場合は、相続人が相続の開始を知った日から4ヶ月以内に被相続人の住所地を管轄する税務署に準確定申告をしなければなりません。
通常の確定申告時期と異なりますので注意が必要です。
6.遺産分割の協議
遺言書がある場合は、それに従った分配をすることになりますが、遺言書がない場合 は相続人全員による遺産分割の協議をすることになります。
遺産の分割協議は、相続人全員でする必要があります。相続人が1人でも抜けた協議は無効です。相続人が遠方に居たり、家庭や仕事の都合でどうしても一同に会せないときは、予め電話等による協議等で合意形成をし、協議書の持ち回りによる署名押印で協議書を完成させることもできます。
分割の方法は、全部分割(全財産を一度で分割)、一部分割(もめている土地等を後回しにして、とりあえず資産の一部を先に分割する・・相続人全員が合意すれば有効とされるが、後々まで問題を残す)、現物分割(土地をAに、建物をBに、株と預貯金をCにというように個々の遺産を相続分に応じて分割する)、換価分割(不動産、貴金属など遺産全部を売却し、その代金を分配する)、代償分割(1人が自宅の土地建物を取得したが、その取り分が多すぎるため、相続分に相当する金額を他の相続人に支払う)などがあります。
分割協議に当たってしばしば問題となるのは、寄与分と特別受益です。
[寄与分]
被相続人が亡くなるまで、同居していた相続人が献身的な看病をしたような場合、相続の寄与になるかという問題があります。
寄与とは、永年に亘り家業を無償で手伝ってきたとか、永年病気の介護看病を献身的に続けてきたとか、事業にあたり自分の財産を提供してきたとかして、被相続人の財産の維持増加につき特別の寄与をした場合、それを寄与分として認めようと言う考え方です。
例えば、療養看護などの場合は、その人の看護がなければ別途入院費用や看護費用が膨大にかかったにもかかわらず、看護によってその捻出が抑えられ被相続人の財産の維持増加に寄与したというような場合です。
従って、単に同居して親の面倒を見てきたというような通常の扶養義務の範囲内では寄与の主張は難しいとされております。
法定相続の場合は、寄与があればまず寄与分の財産額を決め、これを遺産の総額から差引き、残りの遺産を相続人で分け、寄与者はこれに寄与財産を加えて取得することになります。
寄与分の額が相続人間で決らない場合は、寄与者の請求(寄与分を定める調停申立書)に基づき家庭裁判所が寄与の度合いを総合的に判断して決ることになります。
[特別受益]
被相続人から生前住宅の購入費を出してもらったとか、事業の開業資金を援助してもらった、医大に在学中全ての学費生活費を出してもらったなど特別な利益を受けていた場合(特別受益者)は、その分は差引かれると言うのが特別受益の持ち戻しです。
この特別受益は、婚姻のため、養子縁組のため、生計の資本として贈与されたものに限るとされています。
特別受益を受けている場合は、その受けた財産額を遺産総額に加算したうえ、それを法定相続人で分け、特別受益者はその分けた金額から生前もらった分を差引いた額が取り分になります。
なお、過去3年間被相続人から受けた贈与財産が対象となるのは、相続税の課税価格を出す際に適用されるものであって、遺産分割にあたっての特別受益は期間の規定がありませんから注意が必要です。
[遺産分割協議書の記載例]
被相続人甲野一郎(○○市○○町1丁目○番○号本籍又は最後の住所)は、平成24年○月○日死亡したので、その相続人甲野次郎、乙原花子、甲野三郎は、被相続人の遺産につき、次のとおり分割することを協議した。
1次の不動産は、相続人甲野次郎が相続(取得)する。
(1)所在 静岡市葵区城内○丁目
地番 15番8
地目 宅地
地積 156.77m2
(2)所在 静岡市葵区城内○丁目15番地
家屋番号 15番8
種類構造 居宅 木造瓦葺2階建
床面積 1階67.3m2 2階55.45m2
2 |
静岡銀行○○支店の定期預金(口座番号123456)2,000万円は、相続人乙原花子が相続(取得)する。
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3 |
株式会社郵貯銀行の定額貯金(口座番号78892-55113)1,000万円は、相続人甲野三郎が相続(取得)する。
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4 |
相続人甲野次郎は、上記不動産取得にかかる代償分割分として、相続人甲野三郎に現金1,000万円を支払う。 |
以上のとおり分割協議が成立したので、これを証するため、この証書を3通作成し、各自署名押印して、1通づつを所持する。
平成24年○月○日
相続人 住所
氏名 (印)
相続人 住所
氏名 (印)
相続人 住所
氏名 (印)
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7.遺産の払戻し分配・名義変更
相続手続きに当たって、金融機関に凍結されている預貯金や債券、生命保険金の払戻し請求、あるいは不動産の相続登記には、
○ 死亡診断書
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被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
○ 相続人全員の戸籍謄本
○ 相続人全員の印鑑証明書
○ 相続人全員の住民票
○ 遺産分割協議書
○ 相続関係説明図
○ 固定資産評価書
などの書類が必要になります。
当事務所では、必要書類の収集、払戻し請求、名義変更などのもご協力いたします。
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